医療・介護・福祉の初任給と待遇設計|金額以外で比較される軸を作る
人手が足りないから採用する、という順番で動くと、必ず急いで決めることになる。急いだ採用は入社後にずれが出やすく、翌年また同じことを繰り返す。
入口で足切りされない水準を確保する
初任給は、応募するかどうかの入口では強く効き、入社を決める段階では思ったより効かない。まずは足切りされない水準を確保し、決め手は別に用意するという設計になる。
医療・介護・福祉の場合、同業他社との比較になりやすい職種と、業種をまたいだ比較になる職種が混在する。生活相談員と事務で、意識すべき相場が違うことがある。
3年後の見通しを書く
関心は入口の金額より、その後の上がり方にある。にもかかわらず、昇給の考え方まで書いている求人は少ない。
入社3年目の平均的な年収、評価の基準、昇給の頻度。この3つを書けるだけで比較の材料が増える。制度化していないなら、その旨を正直に書いたほうが信用される。
ただし、これは一般的な傾向であって、自社の業種・地域・過去の採用実績によって最適解は変わる。数字を持っている会社は、必ず自社の実績を優先して判断してほしい。
手当は金額と条件をセットで
「各種手当あり」は何も言っていないのと同じである。金額・対象・期間の3つを書いて、初めて比較の対象になる。
資格職と総合職で採用の設計がまったく違う。総合職を採るなら、施設の仕事ではなく法人運営の仕事として説明しないと候補者の層が広がらない。
生活コストを含めて示す
住居費と通勤費が違えば、同じ額面でも手取りの実感は変わる。ただしその計算は会社が示さない限り、誰もしてくれない。
相場と補助額を並記するだけで、比べる軸が一つ増える。費用のかからない打ち手である。
医療・介護・福祉で募集する職種を分けて考える
医療・介護・福祉が新卒で募集する職種は、生活相談員、事務、人事、ケアスタッフなどに分かれる。同じ会社の募集でも、職種が違えば競合も、学生が比較する軸も変わる。
たとえば生活相談員とケアスタッフでは、学生が見ている条件も、入社後に求められる資質も異なる。ひとつの募集要項にまとめると、どちらの層にも届かない文章になりやすい。
資格職と総合職で採用の設計がまったく違う。総合職を採るなら、施設の仕事ではなく法人運営の仕事として説明しないと候補者の層が広がらない。
よくある誤解
「若手が定着しないのは世代の問題」という説明は、原因の特定を止めてしまう。採用時に伝えた情報と実際の仕事にずれがなかったかを確認するほうが、次の打ち手につながる。
「同業に勝てないから他業種から採る」という発想は方向としては正しいが、そのままでは伝わらない。他業種の学生には、医療・介護・福祉の仕事が何に似ているかを説明する言葉が要る。
「求人票は法務的に問題がなければよい」という扱いをしている会社は多い。読んで応募するかどうかを決める文書なので、条件の羅列で終わらせると比較の土俵に乗らない。
自社に当てはめて考える
最後に、自社の状態を点検する項目を挙げておく。全部を同時に埋める必要はなく、影響が大きそうなものを一つ選べば十分である。
- 医療・介護・福祉で募集する職種ごとに、募集要項が分かれているかどうか
- 入社1年目と3年目に任せる範囲が書かれているかどうか
- 勤務地と通勤手段が具体的に書かれているかどうか
- 選考の流れと所要日数を学生に先に伝えているかどうか
一度埋めたら終わりではない。翌年の採用が始まる前にもう一度見直すと、前提が変わっている箇所が見つかる。
よくある質問
同業他社と条件で横並びになってしまいます。
条件で並ぶなら、任される範囲で差をつけるしかありません。入社1年目に何を任せるか、3年目に何を任せるかを具体的に書けると、同じ条件でも見え方が変わります。規模が小さいほど、この部分は書きやすいはずです。
現場が採用に協力してくれません。
人事だけで決めた計画は、現場の協力を得にくくなります。配属先の上長を計画づくりの段階から巻き込み、どんな人を何人受け入れるかを一緒に決めるほうが、面接への協力も得やすくなります。
早期離職が続いています。
受け入れ側の問題として扱う前に、採用時に伝えた情報と実際の仕事にずれがなかったかを確認したいところです。良いことしか伝えていない採用は、必ず入社後に跳ね返ります。
あわせて読みたい
- 飲食・フードサービス離職率のイメージが先行するため、労働時間と昇進の道筋を数字と制度で説明できるかが勝負になる。
- 印刷・紙・包装紙の印刷だけの会社と見られると、市場が縮小している業界と受け取られる。
- 人材・アウトソーシング同業に応募する学生は業界研究が進んでいるので、他社との違いを事業モデルの言葉で説明できないと見抜かれる。
- 既卒・第二新卒新卒だけで枠を埋めようとして未充足になるくらいなら、既卒・第二新卒を対象に含めたほうが早い。
- スカウト文面文面は長さではなく、なぜあなたなのかが最初の3行に書いてあるかで読まれるかどうかが決まる。
- スカウト運用の内製と外注内製か外注かは費用ではなく、継続できるかどうかで決めるべき。
この記事のまとめ
一年で結果が出なくても、積み上げたものが消えるわけではない。学校との関係も、社内の言語化も、翌年の起点として残る。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
株式会社エージェントベスト/有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-316964
相談無料 / OfferBox運用代行(完全成果報酬型)
中小・中堅企業の新卒採用、スカウトで母集団をつくりませんか
- 知名度に頼らず、学生に直接オファーを送るOfferBoxの運用を代行します
- 費用は入社承諾時のみの完全成果報酬(1名20万円)。成果が出なければ0円です
- 中小・中堅企業からのご相談も承っています
医療・介護・福祉の他の記事
- 医療・介護・福祉の新卒採用|地方の中小企業が押さえておく全体像 医療・介護・福祉で新卒採用に取り組む地方の中小・中堅企業向けに、市場の見え方と打ち手の優先順位を整理しました。
- 医療・介護・福祉が求める人物像をどう決めるか|面接で評価がぶれないために 医療・介護・福祉の企業が新卒採用で求める人物像を、理想ではなく実在する社員から逆算して設計する方法をまとめました。
- 医療・介護・福祉で新卒の母集団を作る|応募が集まらないときの切り分け 医療・介護・福祉の中小企業が母集団形成でつまずく原因を、露出・条件・訴求の3つに切り分けて整理しました。
- 医療・介護・福祉の求人票の書き方|仕事の中身が伝わる具体の出し方 医療・介護・福祉の募集要項を、学生が自分の一日を想像できる文章に書き換えるための手順をまとめました。
- 医療・介護・福祉のスカウト文面|業種で敬遠されないための書き方 医療・介護・福祉の企業が新卒スカウトを送るときに、業種名で読み飛ばされないための文面構成をまとめました。
- 介護業界の新卒採用でOfferBoxを使うときの設計|夜勤と介助を先に書く 介護業界の新卒採用でOfferBoxを使うなら、夜勤・身体介助・記録・配置を書けるか確かめてから送ります。イメージを否定しない募集の分け方、行動で絞る検索、実態を先に書く文面、施設の見せ方を整理します。